ラボの検査教室

病院で臨床検査技師として働くラボが検査結果について解説していきます

中性脂肪(TG)の検査値を解説

こんにちはラボです。僕が勤務している病院では健康診断や人間ドックも行っています。最近は健康診断や人間ドックを受ける方も増えてきています。これは健康維持のための生活改善や病気の早期発見・早期治療の重要性が一般的にも知られてきたからだと思います。この重要性がさらに知られ、健康的に長生きできる世の中になるように皆さんも健康診断や人間ドックを受けましょう。

今回は皆さんも聞いたことがあるかと思いますが、中性脂肪という項目について解説していきます。実際どのようなものなのかご存知ですか?

 

中性脂肪(TG:トリグリセリド)とは

中性脂肪は体のエネルギー源であるブドウ糖が不足した場合の代用のエネルギー源です。また体内に取り込んだエネルギーが余った場合に肝臓で中性脂肪に合成し、皮下脂肪として蓄えられます。このように中性脂肪は体の活動に不可欠なものですが、摂りすぎは肥満や脂肪肝の原因となり他の病気の原因となってしまいます。

 

基準値

50~149mg /dl

 

 

異常値になる原因

基準値よりも上昇する原因

・食べ過ぎ、飲み過ぎ

食べ過ぎや飲みすぎなどにより摂取する栄養分が多いと消費できず、中性脂肪への合成が増加し血液中の濃度が上昇します。

 

・運動不足

エネルギーのの消費が低下し、中性脂肪の値は上昇します。

 

・甲状腺機能低下症

甲状腺ホルモンの分泌低下により体の代謝が低下し、中性脂肪の分解が少なくなり上昇します。

 

・ネフローゼ症候群

ネフローゼ症候群では血液中のアルブミンが尿として漏れ出てしまい血液中のアルブミン濃度が低下します。すると肝臓がアルブミンの合成を活発化させます。それに伴い肝臓での中性脂肪の合成も一緒に活発化し、血液中の濃度が上昇します。

 

基準値よりも低下する原因

・食事制限

採血前に過度な食事制限すると値が低下します。

 

・肝障害

中性脂肪は肝臓で合成されます。そのため肝臓の機能が低下すると合成能力が低下し、中性脂肪の値が低下します。

 

・甲状腺機能亢進症

甲状腺ホルモンの過剰分泌により体の代謝が亢進します。それにより中性脂肪の分解が多くなり、値が低下します。

 

 

 

注意点

中性脂肪の測定は食事に大きく影響されるため空腹時に行うことが基本です。そのため高値でも採血前に食事をとっている場合はその影響が考えられます。中性脂肪の値は食後4~6時間がピークになるので、正確な値を測定するためには12時間程度の絶食が必要です。

 

異常値になったら

総コレステロールの値と同様に高値が続くと動脈硬化が進行してしまいます。そのため中性脂肪が高値だと心筋梗塞や脳梗塞などの血管疾患にかかる可能性が高くなります。さらに中性脂肪が高値となると血液がドロドロとなり、血管が詰まりやすくなります。また中性脂肪がとても高い値になると膵炎になる可能性が非常に高くなるので注意が必要です。

そして中性脂肪の値は低くても注意が必要です。体内の中性脂肪が少なすぎるといざエネルギーが必要だとなった時に必要な分を補給することができずにエネルギー不足になってしまいます。エネルギーが不足するとめまいや頭痛などの症状が起きてしまうこともあります。過度なダイエットや食事制限は中性脂肪の低下の原因となりますので注意しましょう。

 

予防

基本的には食事に注意しましょう。摂取カロリーを抑え、糖分やアルコールを控えましょう。体内の過剰な糖を肝臓で中性脂肪に変わってしまうため糖分も制限が必要ですです。また魚や野菜などの食品や運動は中性脂肪を下げるのに有効とされています。

 

まとめ

中性脂肪の高値は動脈硬化の進行を早めてしまいます。そして動脈硬化の進行は心筋梗塞や脳梗塞などの血管疾患につなるので、食事制限や運動などで中性脂肪を上昇させないように注意しましょう。また生活改善では値が改善しない場合は服薬治療も考慮されますので、医療機関を受診しましょう。