ラボの検査教室

病院で臨床検査技師として働くラボが検査結果について解説していきます

赤血球数の検査値を解説

こんにちはラボです。みなさんは貧血でお困りではありませんか。貧血は血液中の赤血球が少なくなることで、体に酸素が供給されないためめまいや倦怠感が起こります。今回はこの赤血球の数について解説していきたいと思います。

赤血球について

赤血球は血液の主な成分で、酸素を肺から各組織に運搬する働きをします。赤血球に関連する検査項目には赤血球の数やヘモグロビン、ヘマトクリットという値があります。体内の赤血球が減少すると体内の各組織へ酸素を運ぶ能力が低下し、細胞が酸素不足に陥ります。体が酸素不足になると様々な症状が出現し、進行すると死に至る可能性がありとても危険です。

赤血球の検査項目である赤血球数は言葉の通り赤血球の数です。ヘモグロビンは血液中のヘモグロビン量を示します。ヘモグロビンは赤血球に含まれるタンパク質で、酸素の運搬にとても重要な役割を果たしています。そしてヘマトクリットは血液中の赤血球の比率を示す値です。これらの項目を総合的に評価し赤血球の評価をします。

 

基準値

赤血球数 : 男性 420~570万個 、 女性 380~500万個

ヘマトクリット : 男性 40~52% 、 女性 33~45%

ヘモグロビン : 男性 13~18g /dl  、 女性 11~16g /dl

 

 

異常となる原因

基準値より上昇する原因

・血液疾患

様々な病気により赤血球の数が高値となります。症状が進行すると血液中の血球の密度が高くなり、脳梗塞や心筋梗塞などの血栓を伴う疾患を起こす可能性が上昇します。

 

・脱水

脱水などにより相対的に赤血球などの数値が上昇することがあります。これは水分補給などで改善されます。

 

基準値より低下する原因

・造血障害

血液を造る部分に異常が起こることで血球が減少します。原因には様々なものがあり、再生不良性貧血や白血病などの疾患が挙げられます。

 

・栄養素の不足

赤血球を造るには鉄分やビタミンなどの栄養素が必要となります。しかしこれらの栄養素を十分に摂取できていないと赤血球が不足します。鉄剤やビタミン剤などで栄養素を補ってあげることで改善します。

 

・エリスロポエチン不足

赤血球は腎臓から産生されるエリスロポエチンというホルモンの指令により造られます。しかし腎臓が障害され、エリスロポエチンの産生が不足すると体が赤血球を造ろうとしないため、赤血球が少なくなってしまいます。

 

・赤血球の異常

赤血球の異常により体内で赤血球が破壊されることによって減少します。赤血球の寿命は通常120日程度とされていますが、赤血球に異常が起こるとそれよりも早く破壊されてしまいます。すると赤血球が造られるよりも壊される方が多くなり、赤血球が減少してしまいます。

 

・出血

怪我や手術などにより多量に出血すると体内の血液量が減少します。赤血球だけでなく血液自体が減少してしまいますので、迅速な対処が必要となります。ちなみに人間は体内の血液の30%程度が失われると死の危険があるとされています。

 

貧血について

上記のような原因により赤血球が減少した状態を貧血と呼びます。様々な原因の中から原因を診断するために赤血球に関連するいくつかの検査を行います。そして貧血になると動悸、息切れ、めまい、倦怠感などの症状が現れ、さらに進行すると気を失ったり、死に至ることもあります。

 

 

主な種類

・鉄欠乏性貧血

最も頻度の高い貧血です。赤血球数が高度に低下します。慢性的な出血や鉄分の摂取不足により起こります。鉄剤の投与により改善することが多いです。

 

・溶血性貧血

血液の病気により体内で赤血球が寿命より早く壊されることで起こります。

 

貧血は赤血球数、ヘモグロビン値、ヘマトクリット値とその3つの項目から算出されるMCV、MCH、MCHCという値からいくつかの種類に分類されます。分類をのせて見ましたので血液検査の結果を受け取った際には参考にしてみてください。

 

MCV:赤血球1個の容積(赤血球の大きさ) (基準値:85〜102 fl)

MCH:赤血球1個に含まれるヘモグロビンの量 (基準値:28〜34 pg)

MCHC:赤血球1個にヘモグロビンの濃度 (基準値:30〜35 %)

 

貧血の分類

MCV

MCH

MCHC

 

小球性低色素性

低下

低下

低下

鉄欠乏性貧血

慢性出血性貧血

正球性正色素性

正常

正常

正常

溶血性貧血

再生不良性貧血

腎性貧血

大球性

上昇

上昇

正常

悪性貧血

溶血性貧血

肝硬変

 

まとめ

貧血になると様々な症状が起き、進行すると命に関わることもある疾患です。血液検査で貧血が疑われる場合は医療機関を受診し、精密検査や治療を行いましょう。

高度の貧血に陥ってしまった場合は輸血が有効な対処法です。多量の出血による貧血の場合は輸血で血液量の低下の対処を行い、その間に出血部分の処置を行うことで救命することができます。しかし輸血には副作用もありますので担当医の説明をしっかりと聞いた上で判断しましょう。

そして病気による貧血の場合は根本的な病気の治療が必要になります。精密検査を行い貧血の原因を診断し、治療を行いましょう。ただし軽度の貧血の場合は経過観察や食事療法などで大丈夫なケースもありますので、担当医の判断に任せましょう。

今回は検査結果の項目に見慣れない項目(MCV、MCH、MCHC)があるかと思います。これらは貧血の原因検索に用いるための項目であり、少しの異常は気にしなくても良いでしょう。

 

今回も読んでいただきありがとうございます。

 


病気がみえる vol.5: 血液