ラボの検査教室

病院で臨床検査技師として働くラボが検査結果について解説していきます

検査技師が解説するAST/ALT比とは?

こんにちはラボです。今日は午後から休みだったので昼からの投稿です。

今回は前回と前々回で解説させてもらったASTとALTの関係に注目したいと思います。

ASTとALTの値が上昇している時には、どのような割合で上昇しているかが診断には重要となります。そのため検査項目にASTとALTの比率を記載している施設もあります。今回はASTとALTの比率のことを解説していきます。

 

AST/ALT比とは

ASTとALTの比率つまりどちらがより高度に上昇しているかを知ることで上昇の原因がどこにあるかを推測することができます。

 

AST/ALT比の値

ASTが優位に上昇する場合  (AST/ALT>0.9)

・肝疾患

肝硬変など末期の肝疾患や肝癌など正常の肝組織が減少している肝疾患ではALTが多く含まれている正常な肝臓の細胞が減少しているため、AST/ALT比ではASTが優位になります。

 

・アルコール性の肝障害

アルコールによってALTの合成が阻害されてしまい肝臓に障害があってもALTの上昇が軽度なため、AST/ALT比はASTが優位となります。

 

・心臓や筋肉の障害

心筋梗塞や骨格筋障害など筋肉の組織にはASTが多く含まれているため、AST/ALT比はASTが優位となります。

 

ALTが優位に上昇する場合  (AST/ALT<0.9)

・肝臓の障害

慢性肝障害や胆道系疾患では肝臓に特異的に含まれているALTが高度に上昇するため、AST/ALT比はALTが優位となります。

 

まとめ

肝機能検査の数値であるASTとALTは単独での異常値も病気の診断には重要なことですが、比率からどこが原因なのかを判断することも重要です。そして肝障害はウイルスやアルコールなどが原因となり、長期化することも多い疾患です。継時的に血液検査の変化を観察し、地道に治療していくことが大切です。

また、肝臓の病気は肝硬変や肝癌など死に至る病気も多いです。早めに医療機関を受診し、上昇の原因を診断してもらってください。

 

今回は少し短い内容でしたがASTやALTは肝臓の機能を評価するためにはとても重要な数値です。皆さんもご自身の検査結果を一度確認してみてくださいね。