ラボの検査教室

病院で臨床検査技師として働くラボが検査結果について解説していきます

検査技師が解説するLDとは?

こんにちはラボです。僕の勤務する病院では臨床検査技師も当直業務があります。救急車で運ばれてくる患者さんの検査や入院患者さんが急変した際の検査などを24時間担当します。夜通し働くのはとても大変ですが、急を要する患者さんへの診療を行うためには重要な仕事ですので頑張っています。

それでは今回はLDという血液項目です。

 

LDとは

LDとは乳酸脱水素酵素の略で糖の分解に関与する酵素の一種です。体内のほとんどの細胞に存在していますが、特に赤血球や肝臓、筋肉に多く含まれています。体内での炎症や各組織が障害された場合に上昇します。多くの細胞に存在するため体内の異常を知るにはとても良い指標です。しかし、炎症や障害がどこで起きているのかは判別しづらいといえます。

 

基準値

120~245 IU/l

 

生理変動

LDは赤血球中に多く含まれています。そのため採血の時に血球に刺激を与えてしまい赤血球が壊れると赤血球中のLDが血液中に放出されてしまいます。このような血液では体内にLD値上昇の原因がなくても検査結果が高値となってしまいます。

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異常となる原因

LDは様々な細胞に存在しているので、多くの病気によって値は上昇します。しかし、LDは各臓器の細胞によって含まれている量が違い、中でも肝臓や血球、筋肉に多く含まれています。

そのため肝炎や肝癌など肝臓の病気や溶血性貧血や白血病など血液の病気、心筋梗塞など筋肉の病気によって上昇しやすいです。

 

 

 

異常になったら

LDは様々な細胞に存在しているので、この項目のみで何の病気なのかを判断するのは困難です。他の検査項目と総合的に判断して診断を行います。しかし、他の血液検査やエコー、CTなどの画像検査などでもLDの上昇の原因が判断できない場合には精密検査としてLDアイソザイムという検査を行うことがあります。

 

 

そこで今回はLDアイソザイムについても書きたいと思います

 

LDアイソザイムとは

LDは構造の違いによって様々な種類のものが存在します。それぞれのLDは構造は違いますが、同様の機能を持っています。このようなものをアイソザイムと呼び、LDには5種類のアイソザイムがあります。そして各組織によってLDの種類の分布が違います。そこでLDの値が高い場合はこのLDアイソザイムを測定し、どの種類のアイソザイムが上昇しているかによって由来組織を判断します。

基準値

LD1:21~33%
LD2:30~37%
LD3:18~23%
LD4:7~12%
LD5:5~14%

 

アイソザイムの上昇

LDには5種類(LD1、LD2、LD3、LD4、LD5)のアイソザイムが存在すると書きました。これらはどの組織に異常が起きているかによって特異的な上昇パターンを示します。そのパターンによって障害が起こっている臓器を診断します。

 

・LD1、2優位

心筋、腎臓、赤血球、腫瘍細胞を由来とする病気で認められます。 

・LD2、3優位

骨格筋、白血病細胞を由来とする病気で認められます。

・LD3、4、5優位

多臓器からの転移性腫瘍の細胞由来で認められます。 

・LD5優位

肝臓、子宮の悪性腫瘍、骨格筋を由来とする病気で認められます。

 

 

LDのアイソザイムによってだけではおおまかにしか判別できませんが、ASTと組み合わせることでさらなる判別が可能です。

下の表はLDアイソザイムの上昇パターンとLD /AST比から判断できる障害部位です。

 

 

 

LD/AST比

疾患例

由来細胞

LD1・LD2優位

5~20

心筋梗塞

心臓

30以上

溶血性貧血など

赤血球

50以上

精巣腫瘍

腫瘍細胞

LD2・LD3優位

5~20

筋ジストロフィー

多発性筋炎

骨格筋

20以上

白血病、リンパ腫

リンパ球(白血球)

LD3・LD4・LD5優位

5以上

急性の筋障害

骨格筋

20以上

悪性腫瘍

 

LD5優位

5以下

急性肝炎

肝臓

 

5~20

子宮癌、肝臓癌

 

このようにアイソザイムのパターンや他の検査との総合評価によって由来臓器を判断します。

 

アイソザイムは健康診断や人間ドックでは検査されず、総合病院などで行われる精密検査となります。アイソザイムの検査は特殊な検査ですので、LD値が上昇していても基本的におこなわれません。検査を行うかどうかは担当医が判断しますので、担当医の判断に任せましょう。

 

まとめ

LDは様々な細胞に存在する酵素です。値の上昇が認められた場合は他の様々な検査との総合的な結果から診断されます。医療機関を受診し精密検査を行いましょう。

また医師の判断によってアイソザイムの検査を行い診断を行うことがあります。そのときにはこの記事を参考にしてご自身でも評価してみてください。

 

今回は少し長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございます。