検査技師が解説する総ビリルビンとは?
こんにちはラボです。僕の病院では職員の健康診断を病院内で行なっており、定期的に1日数十人の健康診断を行います。そしてこれは臨床検査技師である僕たちが行います。そのため健康診断が行われる時期はかなり忙しくなります。
さて今回は肝臓に関連する項目であるビリルビンについて解説して行きます。
総ビリルビンとは
血液の成分である赤血球が分解されてできるのがビリルビンです。ビリルビンは胆嚢に溜められている胆汁の成分の一種であり、胆汁は消化液として消化管内に排出され、便として体外に排出されます。特定の疾患によりビリルビンが体外へ排出されなくなると、体に黄疸など様々な症状が起こってしまいます。
*黄疸とは体内にビリルビンが蓄積することで眼球や皮膚が黄色くなることです。皮膚の痒みや倦怠感などの症状が現れます。
基準値
0.3~1.2mg /dl
異常となる原因
・肝臓
血液中にあるビリルビンは肝臓で処理され体外に排泄されます。そのため急性肝炎や肝硬変、肝癌などによって肝臓の機能が障害されるとビリルビンが処理されなくなり、血液中のビリルビン濃度が上昇します。
・胆道系
胆汁が排出される道である胆道が何かの疾患により塞がれると胆汁が排出ができなくなり、血中濃度が上昇します。胆管結石や胆管癌などの病気が考えられます。
・血液の病気
血液の病気により血球がたくさん壊されると赤血球の代謝産物であるビリルビンがたくさん作られ血中の濃度が上昇します。
初期症状(黄疸)
ビリルビンが体内に蓄積されると黄疸が出現します。黄疸は眼球や皮膚が黄色くなることで、まずはじめに眼球に出現すると言われています。そして黄疸が進行すると倦怠感や痒みが出現してきます。黄疸が出現してきた場合は重い疾患がある可能性が高いので、すぐに病院を受診しましょう。また黄疸は徐々に進行するため自分では気づきにくいことも多いです。家族や友人など他人に指摘されて気づくこともあるので、指摘された場合は他に症状がなくても一度病院への受診をお勧めします。僕の病院でも体が黄色くなってきたので受診しましたという患者さんが重症な病気を持っていたとういことが結構あります。軽く考えないことが重要です。
異常値になったら
ビリルビンは毒性が強く、高度に上昇すると脳や神経に障害をきたすことがあります。ビリルビンの値に異常が認められたら、病院での早期治療をお勧めします。
今回の項目には総ビリルビンと総という字が付いていますが、これはビリルビンは直接ビリルビンと間接ビリルビンに分けられるためです。間接ビリルビンとは赤血球が壊れてできたときにできるビリルビンです。そして間接ビリルビンが肝臓によって処理されたものが直接ビリルビンです。そのため直接ビリルビンと間接ビリルビンの値を測定することでどこの障害が原因で総ビリルビンが上昇しているかが判断できます。
直接ビリルビンの場合
肝臓によって処理された後のビリルビンが体外へ排泄されないために上昇します。胆汁の通り道である胆道系の疾患や肝臓(肝臓内の胆管)の疾患などが原因となります。
間接ビリルビンの場合
溶血性貧血などの血液の病気では壊される赤血球が多く、ビリルビンが多く産生されてしまい血液中の濃度が上昇します。また肝臓の機能が障害される肝硬変や急性肝炎などの疾患では肝臓での処理に障害が起こるため処理される前の間接ビリルビンの濃度が上昇します。
まとめ
ビリルビンの上昇では主に肝臓や胆道系の疾患を疑います。他の肝臓系の血液項目と総合的に判断し、疾患の特定に役立てましょう。また肝臓や胆道系の疾患は早期発見、早期治療が完治につながることが高いです。健康診断での血液検査でビリルビンが高かった場合や黄疸が疑われる場合は早期に消化器内科やかかりつけ医を受診しましょう。
最後まで読んでいただいてありがとうございます。この記事を参考に健康維持に役立てていただけると嬉しいです。こちらの本も参考にしてみてください。より詳しい知識が得られると思います。