ラボの検査教室

病院で臨床検査技師として働くラボが検査結果について解説していきます

検査技師が解説するクレアチニン(Cre)とは?

こんにちはラボです。前回の記事は腎臓に関連する血液検査項目である尿素窒素(BUN)でした。そこで今回も腎臓に関連してクレアチニン(Cre)という項目について解説していきます。

  

クレアチニン(Cre)とは

体内で筋肉がエネルギーを消費して働くと、使われたエネルギーが代謝されクレアチニンができます。クレアチニンは体内には不要なものなので腎臓で濾過され尿として排出されます。腎臓は様々な老廃物を尿として体外へと排出しますが、尿の中には体内に必要なものも含まれています。そのため尿に含まれている物質の一部は腎臓で濾過された後、尿細管という部分で体内に再度吸収されます。しかし、クレアチニンはほとんど尿細管で再吸収されず、尿として体外へ排出されます。そのため腎臓のろ過機能を正確に評価することができます。

 

基準値

男:0.6~1.1mg /dl

女:0.4~0.7mg /dl

*筋肉量の違いにより男性の方が高値となります

 

生理変動

激しい運動後は値が上昇します。これは運動により筋肉でエネルギーが消費されるためです。

 

 

異常となる原因

基準値よりも上昇する原因

・腎臓疾患

腎臓の機能が障害されるとクレアチニンが体外へ排出されず、血中濃度が上昇します。

 

基準値よりも低下する原因

・寝たきりなど体が不自由な方

体を動かせない方では筋肉が萎縮するため低値となる可能性があります。また筋肉を使う機会が少ないのでクレアチニンの値は低くなります。

 

・手足を切断した方

手や足などを切断した場合にはその分の筋肉が体からなくなることになりますので、低値となります。

 

 

異常になったら 

クレアチニンが異常値となった場合はBUNやクレアチニン・クリアランスなど他の検査項目と総合的に判断し、腎臓が原因で異常値になっているのかを評価します。そして総合判断の結果、腎臓に障害が起きていると判断された場合には腎臓の細胞を顕微鏡で直接観察し、腎臓の状態を評価する検査が行われることがあります。この検査は腎臓に針を刺し、腎臓の細胞を採取してくることで行います。この検査によってどのような病気が原因で腎臓に障害が起きているのかが診断でき、治療につなげることができます。

腎臓の病気の時にはBUNの記事で解説させてもらったように蛋白制限や食塩制限、生活習慣の改善などの治療が有効となります。解説に関しては前回のBUNの記事を参考にしてください。

 

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まとめ

クレアチニンは筋肉の活動で産生されるため、血液中の濃度は筋肉量に依存し、個人差が大きい値です。しかし食事量に影響されず、上記したように腎臓での再吸収もほとんどされません。そのため筋肉量が大きく変化しない限りは採血のタイミングにかかわらず、ある程度一定の数値となります。このような特徴から一回の測定結果から値の良い悪いを判断するのではなく、定期的に測定しその変化によって値の評価をすることが望ましい検査項目です。

しかし、クレアチニンは腎臓の濾過機能が60%程度低下しないと値に変化が起きないので、軽度の腎障害の評価には向きません。そのため軽度の腎障害は他の腎機能を評価する血液データと合わせて、総合的に判断すると良いでしょう。

 

 

 

今回はクレアチニンという腎臓の機能を評価する血液データを解説しました。次回はクレアチニンに関連する検査項目であるクレアチニン・クリアランスについて解説したいと思いますので、ぜひ次回も読んでください。