検査技師が解説する尿素窒素(BUN)とは?
こんにちはラボです。最近やっとインフルエンザの流行が治まってきましたね。僕が働いている病院でも1月と2月は患者さんが多く、かなり流行しているなと感じていました。また入院している患者さんへ感染しないように面会へ来られる方への注意喚起がなされていました。インフルエンザは重症化すると危険な病気ですので、皆さんもしっかりと対策をしましょう。
今回の検査項目ですがインフルエンザとは全く関係ありません。今回はBUNという項目について解説していきます。
尿素窒素(BUN)とは
体内で様々な役割をはたす蛋白質は代謝されると二酸化炭素とアンモニアになります。そしてアンモニアは毒性が強いため肝臓にて分解され、尿素になり腎臓から排出されます。この尿素を測定する際の血液検査項目がBUNです。尿素は腎臓から排出されるため腎臓の機能が落ちると血中の尿素つまりBUNの値が上昇します。そのためBUNは腎臓の機能評価に用いられます。
基準値
8~20mg /dl
異常となる原因
基準値よりも上昇する原因
・腎前性 腎臓に障害はないがBUNの値が高くなってしまう原因
・蛋白質の過剰摂取
尿素は蛋白質の代謝物であるため蛋白質を過剰に摂取するとBUNが高値となることがあります。
・消化管出血
消化管出血では消化管内に血液が漏れ出てしまいます。それによって血中のアンモニア濃度が上昇し、その結果BUNの値が上昇します。
・筋肉の障害
筋肉の障害によって筋肉に含まれる蛋白質が壊されると血中に蛋白質が漏出し、血中の尿素の濃度が上昇します。
・腎性 腎臓の障害によりBUNの濃度が上昇する原因
・腎臓の疾患
腎不全や急性腎炎などによって腎臓のろ過機能が低下すると尿素が排出されず、血中の尿素の濃度が上昇します。腎性のBUN濃度の上昇は他の原因と比べて高い値になる傾向にあります。
・腎後性 尿路に障害が起こることでBUNが高値となる原因
・尿管の障害
尿路結石や尿路腫瘍などによって排尿が障害されると、尿として排出されるはずの尿素が血中に戻ってしまい血中の尿素濃度が上昇します。
基準値よりも低下する原因
・肝臓の障害
肝硬変や肝炎など肝臓の障害によってアンモニアが代謝されないと尿素が作られず低値となります。この場合は体内にアンモニアが溜まってしまうので、血中のアンモニア濃度が上昇します。
・腎臓の障害
尿崩症のように尿量が多くなる病気では尿素が過剰に排出され、BUNが低値となります。
・妊娠
妊娠中では胎児が蛋白質を消費するので代謝物である尿素も低値となります。
異常値になったら
腎臓に障害が現れた場合は食事や生活習慣による対策が重要です。
・蛋白質制限
ここまで記載してきたように蛋白質は体内で分解され尿素となり、腎臓から排泄されていきます。そのため蛋白質の摂取を制限し、尿素の量を減らすことで腎臓に負担をかけないようにできます。
・塩分制限
塩分が多い食事を続けていると血圧が上昇していきます。そして高血圧は腎臓に負担をかけてしまいますので、塩分制限および血圧コントロールをして腎臓への負担を減らす必要があります。
・生活習慣
喫煙や飲酒、運動不足などを改善することにより腎臓への負担を減らすことができます。また睡眠不足や過労などのストレスを減らすことも重要です。
蛋白制限や塩分制限などの食生活の改善はとても大変なことです。しかし改善しなければ病気が悪化してしまいます。なので時には他人の手を借りるということも必要だと思います。今回は腎臓病や糖尿病の方への宅食を紹介しておきますので、食生活の改善に苦労している方は一度見て見てください。
まとめ
BUNの値は腎臓の機能に大きく関係します。BUNが高値の場合は腎臓の障害が疑われますので医療機関を受診しましょう。またBUNの値が低いの場合もアンモニアが分解されずに血中にたまっている可能性がありますので注意が必要です。アンモニアの血中濃度が上昇すると脳に障害が現れて危険な状態になる可能性があります。
腎臓の障害が進行すると透析治療が必要となります。透析治療はとても大変な治療ですので、透析が必要な段階まで進行してしまう前に薬や食事、生活習慣の改善による治療をしっかりと行いましょう。